『出草之歌』(井上修監督・112分)は、靖国神社とのたたかいを描いたものだ。
第二次大戦下、台湾の原住民は日本軍にかりだされて大勢の戦死者をだした。戦後、祖先の霊を神社が勝手に「英霊」として祀ったことに原住民が怒り、「魂を返せ!」と訴訟を起こした−そのドキュメンタリーである。先頭に立つのは高金素梅さん。顔立ちはきりりと美しく、その主張は明晰で説得力にとみ、原住民のジャンヌ・ダルクといった観がある。
この映画は、ケン・ローチやマイケル・ムーアの作品と同じく、国境をこえて支配権力に立ち向かい、自らの権利を訴えて堂々とたたかっている人々をとらえている。またこれは音楽映画でもある。かれらは至るところで歌をうたう。歌声は独特で、まるで夜空に向かって狼が遠吠えしているように人々の胸をおののかせる。うたうことで、自らを奮いたたせているのだ。たたかいと文化の結合がここにはある。
いま安倍政権は、日本人の「精神」を国家主義体制に支配・統制するために靖国の国営化を企てている。この映画は、そんな支配者の野望を打ち砕く原点を描いていて、とても刺激的だ。